今回は“父が嚥下障害(飲み込みが悪い)で長期間リハビリしているが、むせて口から食べることができません。どうにかできませんか?”ということについて書きたいと思います。
みなさんあまりご存じないかもしれませんが、嚥下障害(飲み込みが悪い)は耳鼻咽喉科で診る病気です。
脳卒中や神経の病気で嚥下障害が起こることが多いので、脳外科や内科からリハビリテーション科へ移ってそちらで診られることも多いです。
食事の時に歯が影響することから歯科でも見られることも多いです。
しかし、嚥下(飲み込み)は、本来メインはのどで行われ、誤嚥というのはのどの喉頭と咽頭の部分で起こります。
下咽頭から食道に落ちるはずの食塊が、喉頭・気管へと流れて肺へと誤嚥するわけです。
つまりのどの部分で誤嚥しないように防ぐ事が大事です。
喉頭と咽頭というのはまさに耳鼻咽喉科の咽喉にあたる部分です。
耳鼻咽喉科で嚥下障害に関わるのは主に二つあります。
一つは嚥下障害の状態を内視鏡で見て評価する嚥下内視鏡検査というものです。
耳鼻咽喉科が得意な喉頭内視鏡を鼻から挿入してのどが見えるようにした状態で、色のついた水やゼリーなどを食べてみてもらいます。
その程度によって嚥下障害の程度を評価します。
また、必要であればレントゲン透視をしながら、バリウムなどを飲んでいただき嚥下評価をする嚥下造影検査というものも行います。
もう一つの重要な役割として、リハビリしても効果が乏しい患者さんに対して外科的な治療を行って経口摂取ができるようにするということもあります。
手術は、程度が比較的軽く、声が出るようであれば声を残す手術である嚥下機能改善手術を行います。
主な嚥下機能改善手術には、嚥下するときにはのど(喉頭)が上がりますが、これを糸で顎の骨に繋げ、常にあげておく手術(喉頭挙上術)と食道の入り口を普段は締めておいて食事が通るときだけ開く輪状咽頭筋という筋肉を切る手術(輪状咽頭筋切断術)があります。
嚥下障害の程度が重症で、声を出すことがほとんど無い、誤嚥による肺炎を頻回に繰り返している様な患者さんでは、完全に喉頭部分を閉じてしまって誤嚥しないようにする誤嚥防止手術があります。
この場合はほぼ100%誤嚥を防止できますが、普通の声は全く出なくなります。
認知機能に問題がなく、頭がしっかりしていればこの場合は口から食事をする事ができるようになります。
重症の嚥下障害の患者さんの場合は、声を犠牲にしてでも食事が食べたいと希望する方も多いです。
食べることは人間の3大欲求の一つでもあるので、食べる楽しみがなくなるというのは非常に悲しいことです。
もし長期間リハビリしても嚥下機能が良くならないのであれば、主治医の先生と手術を受けられる可能性がないか相談してみてください。
もちろん全身の重い病気があるような方では手術を受けられないこともありますので、よくご相談ください。
以上“父が嚥下障害(飲み込みが悪い)で長期間リハビリしているが、むせて口から食べることができません。どうにかできませんか?”ということについて書きました。皆さんのご参考になれば幸いです。